混んでいるレストランで、やっと視界に入った店員に声をかけると、間髪入れずに「ちょっと待ってください」と返ってくる。小心者の私はその一言で、「今は声をかけるタイミングではないでしょう。私の忙しさがわからないのですか。後にしてください。」そんな店員の心の声が聞こえてくるように感じてしまう。というより、不機嫌な態度でそう表現しているように思える。
レストランには閑散期もあれば繁忙期もある。繁忙期には当然人手が足りなくなる。すべての客の要望どおりに、注文や配膳、会計がスムーズにいかないのは理解している。それでも私は「ちょっと待ってください」という否定的な言葉は適切だとは思わない。どうせ1分後には「お客様、何でしょうか」と聞きに来るのだから、「ただいま参ります」と言えばよいのである。呼ばれた以上、どのみち席には行かなければならないのだから。
これは高級か庶民的かの差ではない。ちょっとした気遣いの問題である。優秀なマネージャーなら「今日から“ちょっと待ってください”はやめ“ただいま参ります”と言おう」と指導するだろう。そして配膳が遅れた顧客には、ピーク後に「お待たせしました。こちらサービスです」と一品を添えればよい。心地よく帰ってもらうことがリピート客確保には重要だ。
路上で価格を売りに呼び込みをしている居酒屋は、入店後の満足度が低いことが多い。呼び込みの人件費を我々が負担している分、料理やサービスの質が下がるからだ。
小宮一慶さんから総合トラックの月例幹部会で「新規顧客開拓に熱心な会社ほど既存客をぞんざいに扱う傾向がある」とご指摘をいただいた。
レストランの席数と運送会社のトラックは、キャパに限界がある点で似ている。総合トラックやメタル便でも繁忙期には対応が追いつかない場面がある。例えば「3月なので難しいですね」といった言い方をしていないだろうか。忙しいのはお客様も百も承知である。お客様は何とか運ぼうと我々以上に真剣に取り組んでいる。
当社でも「できません」と言うのではなく、「確認して折り返します」「最短の便を探します」と言い換えるようにしている。客に説教をする必要は一切ない。求められているのは、応えようとする姿勢なのである。