愛知県にあるK病院のK理事長、60歳を超えた頃より経営の勉強を本格的に始められた。医師の知識や経験とは別の世界なので、経営の勉強は全くのゼロスタート。色々な勉強会では最前列に席を陣取り大型のノートパソコンを持ち込み熱心に受講する姿。でも決してパソコンは堪能ではなく、その入力方法について何度も私に質問をいただいた。
勉強は自身だけに留まらず自分が聞いて良いと判断した先生には看護婦長から事務方や医者に至るまで幅広い職種の幹部スタッフを交替で送り込み、理事長共々一緒に勉強した。
スタッフの戸惑いも大きく、当初は相当面食らっており、その席にいること自体場違いであると感想を漏らしていたが、「継続は力」で何年か経過するうちにスタッフのレベルアップが顕著になってきた。ガラス張り経営に徹しK理事長の苦労の末、数年前より病院としては稀な経営計画発表会も開くに至った。多くの勉強会に参加して良いと思ったことは即実践する理事長なので、幹部には次の問題が出てきた。「現場で実践する時、どの先生の言葉や指導を信じれば良いのか」と。
タイムリーにK理事長は次の手を打ってきた。数年の経営の学びを一冊の本にまとめ、「病院のフィロソフィ」として何百人のスタッフに渡した。門外不出のその本をおねだりしていただいたが、その内容は見事である。
①サービスの質の向上、②従業員の働きやすい環境、③利用者さんを最多にして、④収支を最小にするという相矛盾する4つの項目、目標達成の指針や方法が具体的に丁寧に書かれている。
私は残念ながら、愛知県のK病院にはいったことがないが、スタッフの熱心さや素直さから素晴らしい病院であることは充分に想像できる。医療点数の改定により、年々厳しくなる病院経営にあって、ここ数年好業績をあげているそうだ。