N新聞の取材を受ける。民主党が総選挙のマニフェストに、最低賃金を全国平均で時給千円とする数値目標を掲げ、政権政党になった。最低賃金の上昇について運送業界への影響を聞きたいとの取材であった。
運送業界への影響は少なからずある。ドライバー職は外国人労働者やアルバイトは少ないので、賃金レベルはクリアーしているが、物流加工等の一般軽作業やパート事務員の時給はダイレクトに影響を受けそうだと答えた。
運転手の給料は、このところ下降傾向にある。業種平均でもその傾向は出ているが、荷動きが悪い業種の荷物を運んでいるドライバーは相当影響を受けている。
運送業は、勤続年数は評価されない。20年勤続のベテランドライバーと数年のドライバーも運送売上は余り変わらない。当社もそうだが、運転手の給料に売上に連動した歩合制を採用している会社が多い。だから物量の減少が給料を直撃する。
かつては月給40~50万円位の時代もあった花形の長距離ドライバーも、仕事は年々過酷になるのに反し、ここ数年月給は下がり30万円を切るケースも多々ある。
良き時代を経験した50歳過ぎのドライバーも今になってドライバー職を選んだことに後悔せざるえない状況。月給30万円は一見良さだが、ボーナスは名ばかりの業界で、退職金も大手以外ではしっかりと支給する会社は少ない。
運送業に従事する人は、仕事に誇りが持ち、運転も好きで、体を動かしていくら汗を流しても文句は言わない。でも一家の主として生計は立てていきたい。幸せを求めて働いている。
私は、共働きでせめて2人の子供は高校を卒業させられる給料は、業界として確保していきたい思う。子供が2人なら、人口維持にも貢献できる。
そんな想いを込めて、最低賃金千円は少なからず影響を受けるが、結論は賛成だと答えた。その達成のためにも、業界として価格競争から価値競争への舵取りは必要不可欠だ。
(写真: 新聞掲載に使われた写真)
名糖運輸の中興の祖、田中久夫先生に年に数回経営のご指導を仰ぐが、90歳になられても、そのアドバイスは核心をつく。
数ヶ月前の勉強会で「物量の激減で、一般的には黒字化を目的にするのではなく、いかに赤字を最小限のするか、のための激烈な価格競争に陥っている。先生の過去の豊富な経験に照らして、この現状を打破する為のヒントやアドバイスを」と質問した。
先生は少し間を置かれて一言「良い仕事をするように心がけてください」と言われた。その説明は一切されなかった。先生のご指導は私心をはさまず、ニュートラルである。ラジオの人生相談は好きでよく聞くが、相談内容を聞いていると首をかしげることがある。多くのケースで、相談者は相談以前に自分なり答えをもっておりそれを正当化したい為の誘導質問だったりする。回答者が相談者の思考パターンの延長上で答えを出しても、本当の幸せはには導けない。
田中先生の解答は、正に肩透かしだった。でも時間の経過と共に先生の真意が理解できるようになった。先生はこう言いたかったのだと思う。「あなたの会社の売上はいくらなんですか? 数百億ですか? 数千億ですか? 業績を景気の責任にできるのはそのクラスですよ。自社の業績悪化の原因を、不況に転嫁する前に、あなたは社長としてやるべきことしているのですか? 確かに安い価格を望まれている顧客もいるかもしれないが、良い仕事をする運送会社を望まれている顧客も多くいるのでは? こんな時代だから、良い仕事がより評価されるのではないですか? 頑張りなさい。」と