国土交通省による「総合物流施策大綱に関する有識者検討会」による提言(平成29年6月)
物流が、産業競争力や国民生活を支える「社会インフラ」として途切れることなく役割を果たすため、「強い物流」を実現する必要があるとされており、以下の6つの視点から取組の方向性が示されています。
1. サプライチェーン全体の効率化・価値創造に資するとともにそれ自体が高い付加価値を生み出す物流への変革(=繋がる)
2. 物流の透明化・効率化とそれを通じた働き方改革の実現(=見える)
3. ストック効果発現等のインフラの機能強化による効率的な物流の実現(=支える)
4. 災害等のリスク・地球環境問題に対応するサステイナブルな物流の構築(=備える)
5. 新技術(IoT、ビッグデータ、AI等)の活用による“物流革命”(=革命的に変化する)
6. 人材の確保・育成、物流への理解を深めるための国民への啓発活動等(=育てる)
日本の産業が国際競争力を高め、災害の多い国土で安心して暮らせるため、「強い物流」が必要となる。インフラ整備、新技術による物流革命、物流の効率化、人材確保により「強い物流」を実現させるといったことでしょうか。我が社が取り組んでいるのは1番で、長尺物や重量物の物流交通網の構築による物流効率化かな。6つの提言には盛り込まれてないが、首都圏への一極集中をさけ地方再生も、強い物流の方向性に入れて欲しかった。
ドライバー不足は数年後には確実に深刻になる。少子高齢化や若者の車離れに加え、現在の運送会社の現役ドライバーの高齢化で、これから10年で大量のドライバーが退社していくから。
路線バスや運送会社の入り口など、運転手募集の広告も目に留まることが多くなってきた。総合トラックには22名のドライバーが在籍している。10年前はボトムで5名のドライバーだったが、小口混載の仕事をする様になって、毎年2名ペースで運転手を増やしている。
平均年齢が気になって調べてみたら44歳であった。20歳~65歳が働ける期間とすると丁度中間地点が42歳なので、ほぼ平均的である。調べてみて嬉しかったのは、年齢がきれいにバラケテいることである。写真の右列は年齢で、水色の枠の数字は入社序列である。
2007年に経営理念を次の様に作り変えた。
1.お客様が価値を認める物流サービスを提供する。
2.コツコツ働く人に報いる。
3.地球環境の保全に配慮する。
個人的な運送会社のコダワリや物流業に携わる想いを第三者に話す時必ず出てくる内容を、解りやすい言葉で箇条書きにし経営理念とした。作成した当時は、3項目がキレイごとで実際の運営には合い矛盾する様にも思えた。でも最近関連会社で提供するメタル便にはその矛盾がなく、経営理念の3の輪のど真ん中にあることに気がついた。
順番は「地球環境の保全に配慮する」からスタートした。でもメタル便開始当初からこの共同配送が順調に受け入れられた訳ではなく9年間は苦戦した。でもリーマンショック以降物流が極端に減った時からメタル便の利用が増え、お客様にその価値を認めていだだき「お客様が価値を認める物流サービスを提供する」が現実のものとなってきた。メタル便は、チャーター便に比べ運転手はハードだが、十分な収益が確保できない時は給料でその労にねぎらうことができなかった。だが数年前から何とか納得してもらえる金額にもできた。同時に他ができないサービスを提供しているというプロの自覚ももってもらえるようになった。心身共に「コツコツ働く人に報いる」といえる様になった気がする。有り難いことである。
国土交通省の「貨物鉄道輸送の将来ビジョンに関する懇談会」の報告書によると、2015年ドラックドライバーが14万人不足すると記されている。「物流2015年危機」とも言われるらしい。報告書では少子高齢化が原因とされているが、トラックドライバー不足の背景や要因を考えてみた。
若者の車離れは深刻だ。昔?は、車を持つこと運転することに魅力を感じた。最近どのメーカーも燃費を重視する一方で、デザインが似通っており人を運ぶ道具にしか見えない。買いたいと思わせる車が少なくなってきた気がする。残念ながらマイカーを持たないと運転の楽しさは実感できない。私が学生の時父親から車を借りてぶつけたことがある、父親に謝罪しながら自分の車でないことに悔しさを感じた。レンタカーや業務車だと輸送手段に過ぎず、運転の楽しさが伝わらない。我が社のドライバーをみても、やはり運転することが好きである。一方でいざ車を買おうするとやはり高額で、車を購入しようとする前にスマートホンやタブレット端末を通じてお金が出ていく。
運送業界の就労者を増やす為には、カッコよさが必要だという経営者も多い。職場の清潔さや制服やトラックデザインも大切かもしれない。カッコよさも大切だが、収入はより重要だ。今の50~60代のドライバーはかつては月給が40万円を越えていたが現在では30万円を下回るケースもでてきている。50才を過ぎてから給料が減っても、いまさら転職はできない。この実態を知った時、若者は将来に向けて不安を感じる。介護業界は成長産業で社会性もあり有意義だが、若夫婦が二人とも介護業界では生活は苦しい。同様に「モノを届ける」運送に大きな意義があっても、未来の安定した生活が見えてこないと魅力は感じられない。
農業とまではいかなくても運送会社も年々高齢化してきいる。活力ある20代を採用していく為には、業界自体が魅力がなければならない。
ヤリガイのある仕事、生活できる給料、カッコ良さ・・・
各社それぞれ模索する中、正解はない。
運送会社 いや運送屋というと、一昔はヤンキー・茶髪・デコトラ・暴走族のイメージがあった。最近は一般の方が宅配便の教育されたドライバーと接する機会が増え、イメージは一新されている。
総合トラックも求人者にとって魅力ある職場作りは重大な関心事である。私は現場仕事の尊さや、プロ意識、チームワークを大切にしている。とおのずと、カッコ良さが出てくると思う。先日知り合いの女性が来社した時、現場をみて「カッコ良い」と言ってくれ彼女は一眼レフに現場の写真を数枚撮った。私にとっては一番の褒め言葉である。私は働く人が満足する職場作りが優先と考えている。お陰様でここ数年はドライバーの退社はなく、新人も紹介で入ってくれている。
社史の作成にあたり梶哲商店の歴代の役員と対談を企画した。
父の梶哲が35年社長をして、兄が25年社長をしている。私は約10年間在籍した。
野末さん(写真は右下)主に先代の梶哲時代で、岡崎さん(写真左上)は二代目の梶哲夫時代の役員である。
対談の中で当時を思いだすと共に、多くの気づきもあった。
会社の大ピンチが会社の変革につながってきていること、
多くの方々に支えられてお世話になってきたこと、
会社の成長は新規事業であると同時に、時代にそぐわなくなって事業を辞めてきたので今日があると言うこと。
乱立している例で引き合いに出されるのがこの3業態。
全国でコンビニは約5万社、運送会社が約6万社、歯科病院が7万社と言われている。運送会社を例にすると、国民2000人に1社ある計算になる。乱立=競争を意味し、私のいる運送業界は厳しい。でもその3業態は実は内容にかなり差がある。
コンビニは確かに店舗数が多いが、大手が系列化しており業界を形成しているのは数社なのであり、各系列は特色を出しつつ極端な過当競争はしていない。年々店舗も多機能化させ他の業態に商圏を広げ、海外にも積極的に進出し拡大している。
運送会社は正確には62,000社で大手と中小零細企業が混在している。大手10社で業界売上の4割を確保し、多くの零細な運送会社がその大手の下請けになっている。大手が下請け仕事を出すのは自社よりコストが安いからで、下請の経営は常に非常に厳しい。
歯科業界には大学病院系であっても売上比1%はない。全て小粒で元請や下請けは存在しない。医科大の私学なら卒業までに6千万~1億円はかかる一方で、実際に働くと年収3百万以下もざらにいると言う。年間の倒産や廃業は1500件あり、別の問題が存在している。歯科の予防医療も進化して、若者の虫歯も少なくなっている。20歳になる私の息子は虫歯が一本もない。
最近の運送会社の深刻な問題は後継者。子供が優秀であったらなおさら、家業と言えども後を継がないかいもしれない。不動産があれば業態変更した方が良いかもしれない。数十前に倉庫業・運送業を廃業状態にして不動産の有効活用に方向転換した会社があるが隆々としている。一昔前の運送会社の社長には時間が充分にあった。朝トラックを送り出せば終日時間が自由になった。ラーメン屋や寿司屋やスナックなど飲食業に多角化した会社もいくつか知っている。昔は本業をないがしろにしてと軽蔑したこともあるが、いま考えれば将来を冷静に見ていた経営者かもしれない。そう言う私は目的があって不器用だが、物流業に依然しがみついている。
2011年春に内容証明が届いた。在籍しているドライバーA君からで、過去2年間で残業未払いが100万円あり即刻支払えという内容だった。A君は歩合制と残業を併用している給料体系で、まさかと思い過去2年間のタイムカードと売上と賃金台帳を付け合せたら確かに会社に否があり24万円の未払いが判明した。その主旨を伝えると、A君は不服として労働基準監督署に駆け込んだ。争点は休憩時間になった。結局A君は労働基準監督暑の認めた金額にも納得せず「あっせん」、でも歩み寄れず裁判になった。双方に社会労務士や弁護士がつき相当額の費用も発生した。一年以上かけ判決を得ることなく和解で幕を閉じた。
振り返ると経験したことがない「あっせん」や裁判に、運転手の生活を守る為にしてきたビジネスでまさかの訴訟、気の重い一年間だった。幸いしたのは給料体系や就業規則を全て見直しができたこと。でも就業規則の条項は以前の倍以上になった。その間、心のよりどころとなったのは「働く人の汗に報いる」という経営理念の一項目だった。
会社を信用して一生懸命に働いてくれる運転手に公平に報いたい、安心して働ける職場を作りたいとの想いを深くした出来事だった。
「失われた10年」や「失われた20年」という言葉は、日本経済を客観的に観た時かなり的確な表現だと思う。アメリカでさえこの間にGDPは2倍になっており、世界中で日本だけが経済成長が置き去りにされている。先日小宮一慶さんになぜ日本だけGDPが伸びないのか聞いたが「供給に対して消費が少ないから」と言われた。
この一言を私なりに解釈すると
① 少子高齢化により消費が大きく見込まれない
② 20年前に既に日本人は豊かで大きくお金を使うものがない
③ インフレマインドが日本にいきわたっている
リー・カンユーが新聞社のインタビューで「私は高齢になったので若い時と違って、どんなにカッコ良い車が出ても買う気持ちは起こらない。少子高齢化はシンガポールも日本も一緒だが、リーマンショック後、日本は外国人労働者を追い出したが、シンガポールは積極的に受け入れている」と言っていた。
GDPが上がると国家財政や医療問題や年金問題の全てが解決する。GDPをあげる解決策として、私は能力のある移民を積極的に受け入れるべきだと思う。すでにお金持ちが日本から財産を移し始めている。企業にとって、GDPは会社の売上。会社の売上はお客様に会社が選ばれ支持された結果。日本も世界中の富裕層や優秀な人から愛され選ばれる国になれば、高コスト体質でも生きていける、日本の治安の良さや繊細な国民性や優しさ、そして美しい自然。