知的障害者の社会活動のモデル企業として、ワインを製造販売するココファームと、スワンベーカリーはその代表格。日本中だけでなく海外から、その運営を学ぼうと連日見学者が絶えない。今日はスワンの海津社長の始めてのココファーム見学に同行する。
見学の後、ココファームの池上専務とスワンの海津社長との意見交換。共通点が圧倒的に多く、運営の本音や実態も聞けて素晴らしい経験をさせてもらう。
① 「障害者がまごころ込めて作りましたので、どうか買って下さい。」とは絶対言わない。まごころを込めているのは、障害者も健常者も同じ。そんな安易な販売をするから、買う人が障害者に対して上から目線になる。
ココファームのぶどう園から採れるワインは年間約3000本。障害者に体を動かす場を作ることが目的でスタートした農園、手間をかけることはいとわない。農薬を使わないので雑草・害虫・カラスと、毎日が闘い。機械化に頼らない丁寧な手作業は、ブドウの品質を高めていく。その結果として、高品質のワインの誕生。
ココのワインは年に一度、ビン詰め後販売するが直ちに完売になる。品質に対して価格が安いことを消費者が認知しているからだ。スパークリング「NOVO」は1本9500円、ドンペリニヨンと同じ価格帯にある。障害者が作っただけの理由で買える価格ではない。
② 障害者はできないことが顕在化しているが、健常者はできないことが潜在化(ハンディを隠す知恵がある)している。人間だから欠点やハンディは大小の差はあれ誰もがもっている。
こころみ学園に入園して10年間、全く仕事をしなかった人がいた。でも何かが吹っ切れた11年目から、別人に様にモクモクと仕事をし始め、今では職場でなくてはならない存在になっている。それを10年間暖かい目で見続けたも学園も素晴らしい。
健常者は仕事をしたふりをするのが上手だという。納得してなくても働ける弊害かもしれない。
③ 知的障害者は「わからないことがわからない」。でも一端納得すると、わからないことでも一生懸命やる。それが素晴らしい魅力になる。一人一人が天使だと言う。
自然相手、ある年ブドウの収穫が壊滅的な打撃を受けた。資金が潤沢ではないココファームにとっては大問題。深刻な状況の中、一人の障害者が「明日もブドウを作ろう」とサラッと言った。池上さんはその一言が大きな支えになったと言う。
考えてはダメ、そんな時だから自分達にできることをするのが正解のなのだと気付かせてもらった。障害者は健常者が見えていない大切なモノ、本当のことが分かっているのだと、池上さんは話の中で何度も折々に言っていたのが印象的だった。
(写真1: こころみ学園がぶどうを作り、ココファームが醸造する)
(写真2: 平均斜度38度のぶどう園。日当たりは最高)