数年前に当社の若手の幹部社員が退社した。退社後は友人に誘われ個人事業主としてアマゾンの宅配をするという。友人からは一ヵ月の売上明細を見せてもらい、記憶ははっきりしないが一ヵ月で70万円位の売上があったと思う。この売上から車両の償却費と燃料代を差し引くと手取りで、かなり高収入である。でも売上のベースは配達件数で100%の歩合、土日祝日も働き、遅い時間帯まで個人宅に配達する。本人曰く「家族の為に365日死ぬ気で働きます」と言って退社した。これがギガワーカーであり、実態は厳しい労働環境である。正規労働者の賃金では成立しない仕事である。健康保険は?厚生年金は?病気をした時の保証は?働けなくなった瞬間から収入は無くなる。どの様な経過があったか知らないが、赤帽に代表され軽トラックの輸送業務で、日本で唯一個人経営が認められている運送業務である。個人経営なので働き方改革もあったものではない。職業に貴賤はないが、法の抜け穴であり、残念な仕事に思えてならない。
自社ドライバーからギガワーカー頼りへの仕事のシフト、ヤマト運輸は何のために宅配の仕事をいままで拡大させてきたのだろうか。お客様の利便性の為、会社の利益の為。正社員や下請けを問わず、そのサービスを維持する為に働く人を犠牲にして良いのだろうか。ヤマト運輸は国の規制と正々堂々と戦い、市場も自ら創造し現在のサービスを作り上げてきた尊敬すべき会社である。でも電子商取引の拡大が独創性をもったヤマト運輸のビジネスモデルを大きく変え、方向性まで見失ってしまった様に思えてしまう。我が社も独自の長尺物の全国配送に取り組む様になって、顧客様に喜んでもらい、弊社の社員も幸せになり、パートナー会社も豊かになり、地球環境にも優しい、そんなビジネスができないかと願ってきた。規模が小さいからこんな理想論を言えるのだろうか。