経営アドバイサーの高島陽先生は約束について、生前こんな事例の話をされてた。ニューヨークに商談にいくとする。上司から「もし時間が有ったら家内が欲しがるティファーを買ってきてくれないか。勿論仕事が最優先で、時間が余ったらの話だが」と言いにくそうに依頼される。ニューヨークでの部下は、現地で一生懸命仕事して商談を上手にまとめる。上司に喜んでもらおうと帰国し仕事の成果を伝え、一方で時間がなくてティファニーはいけなかったと報告したとする。結果として上司から彼の出張の評価は0点だと。お願いしづらい頼まれた事こそ最優先に動けと教えてくれ、これが世の中だと。実際に高島先生に、私の私的なことで先生の人脈を紹介して欲しいとお願いした時、その日にすごい勢いで動いてくれた。むしろなぜ早く相談の来なかったのと注意を受けた。
鍵山秀三郎さんも上級者。イエローハット本社での掃除研修に参加し、研修後鍵山さんと質疑の時間を取ってもらった。その折森信三さんについて質問したら丁重に答えていただいた。その一週間後に、初対面だった私に森信三さんの本が郵送されてきた。私が質問した時本を送ろうと決めたのだけどはその場では言わなかったのだ。その時少女パレアナの小説を勧められた、人を喜ばすことは躊躇しないで行動、まさに鍵山さんは私に対して実践してくれた。相手に伝えない約束だってある。約束の実行は相手への敬意の表れ、だから重要か些細か、大きいか小さいかの差は無いと思う。
私が小さかった時、母が父に「口軽くすぐ約束して結局実行しないんだから」と文句を言っていた。特に、意気投合した人には夫婦での旅行に誘うのである、そんな事象を母が責めていた様だ。でも両親が亡くなり両親の写真を整理していたら、次々と色々な人との夫婦単位の旅行の写真が出てきた。同じ人とはほとんどなく、大きな車が好きな父親がプレジデントを運転し温泉にお誘いした時の記念写真だ。案外父は有言実行だったかもしれない。
私はと言うと、会社での口からでた約束事の実行率は55%位。忘れてしまうのもあるが、後で客観的に考えたらやらない方が良いのでと思ったりして。いづれにしても低い。
その場の勢いで言葉を発して、結果的に約束したことになるケースが良くある。
「飲みに行きましょう」「私それ使ってないので、さしあげますよ」「私の方で調べておきます」「ぴったりの人知ってますので、紹介します」。思い付きで発した言葉で相手にとっては迷惑なときもあるが、相手に期待させる時もある。酔った席では約束を連発してまうが、ほとんどは忘れてしまう。
「今度飲みに行きましょう」といったら大抵は社交辞令で実行されない場合が多い。私の場合は、今後=実行しない、に等しい。
本気なら「今度飲みにいきませんか?」と相手に一回ボールを投げる。そして相手がまんざらでなければ、誰々を誘ってとか、銀座に良い店知ってますとか、いつ頃とか具体化していく。
学生時代面白い先生がいて「君らは頭は良くない、大きな会社に入社して高学歴の同期がいたら決して頭で戦おうと思うな。頭を深く下げて(=世渡り)人間力で勝負しろ。でも高学歴で且つ頭を深く下げる人が稀にいる。その時は負けを素直に認めて争うな逃げろ」と教えられた。このアドバイスは私の人生を大きく変えた。でも社会に出て40年過ぎた今なら、この教授の話をより具体化して「でも小さな約束は守れ、それが信用となっていく」と付け加えたい。小さな約束を守れる人は実際はほんの少数で、皆小さな約束をホゴにして毎日を過ごしている。でも私の知りうる限り実際に大きな事を成し遂げた人ほど、どんな些細なことでも約束はきっちり守ってくる。
左の写真は社員から言付かった用事を、忘れない様に手の甲に書き込む。これも私のとっては大切な約束こと。
トラックディラーの営業が来社した。
「トラック売れている」と毎回同じ質問から会話がスタートする。2017年に大幅な値上げによる駆け込み需要があったが、その受注が一段落したとのこと。夏以降は浦安鉄鋼団地のお客様に積極的に営業をかけ成果が上がっているという。鋼材屋さんが持つトラックなので、大部分は自家用トラックだとのこと。運送会社は最大積載且つ最長荷台を狙うので4t車なら6.2Mボディが標準となるが、鋼材屋の場合は最大積載量が最優先となりしかも運転し易い様にショートボディが多いそうだ。
昨年春に浦安鉄鋼団地のお客様に物流勉強会と称して、ドライバー不足を起因する物流クライシスをお伝えした。100名近く集まりお陰さまで盛況で終わった。ドライバー不足は解った、運賃値上げも解った、仕事を断ってくるかもも解った。ならどの様に防衛するか・・答えは、運送会社としては後ろ向きだが、お客様が自家用トラックをもってもらうのが一番の防衛策だとお伝えした。私の提案が影響を与えたとは思わないが、流れの先を読めていたことは間違いないとトラックディラーさんの話を聞いて小さな自己満足。