2011年春に内容証明が届いた。在籍しているドライバーA君からで、過去2年間で残業未払いが100万円あり即刻支払えという内容だった。A君は歩合制と残業を併用している給料体系で、まさかと思い過去2年間のタイムカードと売上と賃金台帳を付け合せたら確かに会社に否があり24万円の未払いが判明した。その主旨を伝えると、A君は不服として労働基準監督署に駆け込んだ。争点は休憩時間になった。結局A君は労働基準監督暑の認めた金額にも納得せず「あっせん」、でも歩み寄れず裁判になった。双方に社会労務士や弁護士がつき相当額の費用も発生した。一年以上かけ判決を得ることなく和解で幕を閉じた。
振り返ると経験したことがない「あっせん」や裁判に、運転手の生活を守る為にしてきたビジネスでまさかの訴訟、気の重い一年間だった。幸いしたのは給料体系や就業規則を全て見直しができたこと。でも就業規則の条項は以前の倍以上になった。その間、心のよりどころとなったのは「働く人の汗に報いる」という経営理念の一項目だった。
会社を信用して一生懸命に働いてくれる運転手に公平に報いたい、安心して働ける職場を作りたいとの想いを深くした出来事だった。
「失われた10年」や「失われた20年」という言葉は、日本経済を客観的に観た時かなり的確な表現だと思う。アメリカでさえこの間にGDPは2倍になっており、世界中で日本だけが経済成長が置き去りにされている。先日小宮一慶さんになぜ日本だけGDPが伸びないのか聞いたが「供給に対して消費が少ないから」と言われた。
この一言を私なりに解釈すると
① 少子高齢化により消費が大きく見込まれない
② 20年前に既に日本人は豊かで大きくお金を使うものがない
③ インフレマインドが日本にいきわたっている
リー・カンユーが新聞社のインタビューで「私は高齢になったので若い時と違って、どんなにカッコ良い車が出ても買う気持ちは起こらない。少子高齢化はシンガポールも日本も一緒だが、リーマンショック後、日本は外国人労働者を追い出したが、シンガポールは積極的に受け入れている」と言っていた。
GDPが上がると国家財政や医療問題や年金問題の全てが解決する。GDPをあげる解決策として、私は能力のある移民を積極的に受け入れるべきだと思う。すでにお金持ちが日本から財産を移し始めている。企業にとって、GDPは会社の売上。会社の売上はお客様に会社が選ばれ支持された結果。日本も世界中の富裕層や優秀な人から愛され選ばれる国になれば、高コスト体質でも生きていける、日本の治安の良さや繊細な国民性や優しさ、そして美しい自然。
小宮一慶さんの新書「ドラッカーがマネジメントでいちばん伝えたかったこと」を読み始めた一章に、マネジメントには自らの組織をして社会に貢献させるうえで三つの役割があると書かれていた。具体的には
1.自らの組織に特有の使命を果たす。
2.仕事を通じて働く人たちを生かす。
3.自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する。
このドラッカーの文章に一つ一つ小宮さんが丁寧に解説している。
読んでいて嬉しくなってきた。理由は総合トラックの経営理念の3つに 近い範囲の内容だからからだ。経営理念を作る時、深いことは考えずに、どんな想いで運送会社を経営しているか、普段回りに話していることを3項目にし明文化した。
1.お客様が価値を認める物流サービスを提供する。
2.コツコツ働く人に報いる。
3.地球環境の保全に配慮する。
少年野球のコーチが普段話している指導が、プロの名監督の名語録と偶然一定したようなものだ。
ある知人が話していた。「我が家に強姦や強盗が押し入ってきたらどうする。」と
「我が家は平和主義なので、喧嘩もしません、武器も持ちません、暴力も反対です。だからお引取り下さい。」と説明して賊がおとなしく帰ってくれるか。そんなことを言っている内に、家族が傷つけられ金品も奪われる。警備が強固な家や 武術の達人の家や、凶暴な番犬を飼っている家は、強姦も危険だから浸入してこない。
隣人に強靭な空手の達人がいて、危険な場面には助けて欲しいと普段から頼んでいたとする。でも、隣人が空手の練習にいくために車を貸して欲しいと言って来た時、空手は野蛮だから車を貸さないと断ったら、いざとなったら本当に助けてくれるのだろうか。
企業活動も同じで、闘っても、社員やその家族を守らなければいけない時があるかもしれない。
ある大手自動車メーカーでは、毎年3%づつ物流費を下げることが義務付けられていると聞く。初年度が100なら、2年目は97、3目は94、そして91、89、85と毎年請求額が下がっていく。その値下げの原資は、合理化で解決して欲しいという。
現状で自動車部品を輸送している運送会社には3%の経常利益は出ているのだろうか。仮に出ていたとしても、翌年か翌々年には赤字転落になってしまう。
私は、自動車メーカーは愚かだと思う。特別のことがない限り今の運賃で頑張ってもらって、もし合理化で利益があがったら、社員の給料を上げてやってくれと言った方が、働く人はやる気がでるし、手取りが増えた分が新車の販売に繋がっていく。br />
毎年3%の削減は循環し継続はできない。渓流下りでその数キロ先に生死を分ける絶壁の滝の存在を知って、必死になってカヌーをこぐ人はいない。その先に楽園があるなら、いまの労働も決して苦にならない。人は幸せについてくる。
京都東山に真々庵という庵がある。知人の特別な計らいで見学させていただいた。
「真々庵は昭和36年に松下幸之助さんが社長を退任して会長に就任したのを機に、一時中断していたPHPの研究活動を再開するために求めた別宅。昭和55年に松下電器の施設となり全面改築、名称も松下真々庵とし、当時と同じ状態に庭園・建物を整備保存し迎賓機能を果たしている。」「庭園は7代目小川治兵衛(庭治)の明治42年の作で、東山を借景」松下真々庵のパンフレットには転記されており、多くの著名時がここを訪れている。庭園を維持するため、一般公開はされていない。
約束30分前に車で現地を通りすぎると、既にスーツを着たお迎えの男性が2名が門で待たれている。水を張った石畳、取り囲む緑、見事な苔、そして玄関。玄関ホールには支配人と着物の女性の2名が迎えてくれる。芳名帳に記入を済ませ本館の広間に入ると、一面に見事な庭園が目の前に広がる。
本館で一通り説明を聞き、庭園に。庭園の小道、コンクリートと思ったら、白砂がきれいに敷き詰められている。苔と白砂の境目は5ミリ位の土が覗くが、その境目に見事に砂が盛られている。支配人に手入れを聞くと、我々の訪問に際し、手で白砂を均し、苔との境目は定規を当て盛っているそうだ。しゃがんで凝視しても砂1つも土にはみ出ていない。見事である。
それを切っ掛けに迎える準備を色々を質問する。年間通じて常勤15名の庭師らがこの庭園の維持にあたる。来客をお迎えするため落ち葉は全て拾われ、今落ちている落ち葉は30分以内に落ちたものだという。管理スタッフは我々の見えないところで、待機して黒子にて徹する。本館の絨毯も来客の見学コースと時間を計算して、3回は足跡を消す為の清掃が入るそうだ。確かにその瞬間は自分の足跡がついているが、地下に展示室を見た後一階に戻るとその足跡は消されていた。
日本の「おもてなしの心」の真髄を学ばせていただいた。我々の質問攻めで聞かせてもらうことができたが、本来語らないことだ。見えないところにどれだけ手間をかけることが出来るのか。お客様が清清しい気持ちで数時間を滞在してもらうために、年間を通じて最善を尽くしている。真々庵はベストシーズンで準備が整った時しか門は開かれないという。下世話な私はすぐお金に換算したが、一回の訪問は100万円~150万円を下らないコストはかかっている。
自宅に帰って家内に真々庵の話をしたら「そう言えば最近パナソニックの冷蔵庫を買ったから、あなたもお客様だわ」と言っていた。
(写真: 写真撮影は厳禁、パンフより)
大手物流会社Aに下請けで入っているB運送から聞いた話。
A社の仕事は建築現場搬入が多く、2t車で一回配達すると20,000円、二回目の配達が5,000円、三回目の配達も5,000円の運賃契約。運転手は売上げを確保するに3回は配達したいので、必死になって時間を有効につかい配達する。でもA社がお客様へ請求する運賃は、一回目も二回目も三回目もそんなに運賃は変わらないと思う。元請にとっては、二回目、三回目の方が支払い運賃が安い分だけ、利益率が高い。私はこれを元請の暴利だとは思わない。 B社にとっては直接荷主がないので、元請に車両を預けるしか方法がないのである。
元請は、組合せできる荷物を集めて配車して効率良く動かしていく。情報量の多さがそれを可能にする。荷主から仕事を受注しても、何もアレンジせず単発で運行していれば、その物流会社の機能は単に運ぶということに限定されてしまう。それなら、お客様がトラックを購入するばできる仕事で、お客様にとってのメリットは単に、自社でやるより安いからと言う理由になってしまう。
大阪の吉田です。 お元気様です。今日は私の愚痴につきあって下さい。
今日、運行管理者講習に行って参りました。 あまりにも愕然とし、落胆しました。我が業界の管理者たる者の講習に参加する服装にです。200名ほどの受講者が多くはTシャツ 色とりどり(会社のユニホームではなく完全に普段着)です。私の見たところ6割以上が普段着です。そのまま仕事に復帰できる格好をしている人は確実に4割以下でした。私の前の席に座っていた人間なんかは背中にALOHA!と書いた黄緑色のTシャツです。 しかもズボンは半ズボン・・・ どこかで見たことがある景色、雰囲気でした・・・? そうそうパチンコ屋さん! ほかには競馬の場外馬券売り場も こんな雰囲気。土日の開催ならともかく今日は木曜日。 なんですか ここは? なんと情けない業界なのでしょうか。
この人たちは夕方3時半ぐらいに講習は終わるのに会社に戻らないのだろうか? 戻らないとしても、もし?緊急でお客様に呼び出されたらどうするのだろうか? 着替えに帰るの? 緊急だったらどうするの? ましてや運行管理者でしょ? 今日、今 自社で重大事故が起きたらその格好で駆けつけるの? 被害者や、その家族にその格好で会うの?
運行管理者というのは往々にして会社の経営者、幹部、管理職、リーダーなはず・・ そのポジションの人間が大方 こんな服装をして受講してきて、どう考えても夕方受講終了後に仕事に戻るような気配は感じられない。ドライバーさんや倉庫作業員さんはこの時間 酷暑の中頑張ってくれているのに。業界のリーダー達がこんなんだから 一生懸命頑張ってくれているドライバーさんが「クモスケ」なんて言われるんだ! 本当に怒りを覚えました。 この業界を少しでも誇りある業界にしたいと切に願います。
■同じ日に偶然、私も東京で同じ運行管理の研修を受けていた。そういえば私の前に座った人もアロハシャツだった。 梶
愛知県にあるK病院のK理事長、60歳を超えた頃より経営の勉強を本格的に始められた。医師の知識や経験とは別の世界なので、経営の勉強は全くのゼロスタート。色々な勉強会では最前列に席を陣取り大型のノートパソコンを持ち込み熱心に受講する姿。でも決してパソコンは堪能ではなく、その入力方法について何度も私に質問をいただいた。
勉強は自身だけに留まらず自分が聞いて良いと判断した先生には看護婦長から事務方や医者に至るまで幅広い職種の幹部スタッフを交替で送り込み、理事長共々一緒に勉強した。
スタッフの戸惑いも大きく、当初は相当面食らっており、その席にいること自体場違いであると感想を漏らしていたが、「継続は力」で何年か経過するうちにスタッフのレベルアップが顕著になってきた。ガラス張り経営に徹しK理事長の苦労の末、数年前より病院としては稀な経営計画発表会も開くに至った。多くの勉強会に参加して良いと思ったことは即実践する理事長なので、幹部には次の問題が出てきた。「現場で実践する時、どの先生の言葉や指導を信じれば良いのか」と。
タイムリーにK理事長は次の手を打ってきた。数年の経営の学びを一冊の本にまとめ、「病院のフィロソフィ」として何百人のスタッフに渡した。門外不出のその本をおねだりしていただいたが、その内容は見事である。
①サービスの質の向上、②従業員の働きやすい環境、③利用者さんを最多にして、④収支を最小にするという相矛盾する4つの項目、目標達成の指針や方法が具体的に丁寧に書かれている。
私は残念ながら、愛知県のK病院にはいったことがないが、スタッフの熱心さや素直さから素晴らしい病院であることは充分に想像できる。医療点数の改定により、年々厳しくなる病院経営にあって、ここ数年好業績をあげているそうだ。
セイノーロジックスの渡辺社長の部屋には、大きな世界地図が壁一面に張られていた。
大きな地図とは別に、気になる一枚の地図が。通常見る地図とは上下が逆になっている。ひっくり返して張ったのではなく、富山中心正方位図とあり地図に記載の文字が確り上を向いている。日本海が、ロシアと朝鮮と日本に囲まれた湖に見えてくる。
九州から北海道にモノを運ぶとき、釜山経由で運んだ方が安くつく。リードタイムは6日間。日本国内で陸送700キロの距離なら、海運を使って釜山経由でも、全ての諸費用を加えても価格の優位性はすでにあるそうだ。もしそこに安い海外の人件費を利用して、物流加工や製造工程を移管すればメリットは計り知れない。水は高いところから低いところに流れる。渡辺さんは情報レベルではなく、十数年前からその価格差に気が付き、自社のビジネスに組み入れている。
ここ10年で欧米の物流企業は吸収や合併を繰り返して数社に集中してきている。世界の勝ち組の物流会社である。ドイツポスト(日本の郵政に相当)グループのDHL、DBグループ(日本のJR)のSchenker はその中心にある。
渡辺さんの話にはフォワダーやインテグレーターといったカテゴリーは有ったが、物流会社や3PLといった言葉は出てこなかった。