名糖運輸の中興の祖、田中久夫先生に年に数回経営のご指導を仰ぐが、90歳になられても、そのアドバイスは核心をつく。
数ヶ月前の勉強会で「物量の激減で、一般的には黒字化を目的にするのではなく、いかに赤字を最小限のするか、のための激烈な価格競争に陥っている。先生の過去の豊富な経験に照らして、この現状を打破する為のヒントやアドバイスを」と質問した。
先生は少し間を置かれて一言「良い仕事をするように心がけてください」と言われた。その説明は一切されなかった。先生のご指導は私心をはさまず、ニュートラルである。ラジオの人生相談は好きでよく聞くが、相談内容を聞いていると首をかしげることがある。多くのケースで、相談者は相談以前に自分なり答えをもっておりそれを正当化したい為の誘導質問だったりする。回答者が相談者の思考パターンの延長上で答えを出しても、本当の幸せはには導けない。
田中先生の解答は、正に肩透かしだった。でも時間の経過と共に先生の真意が理解できるようになった。先生はこう言いたかったのだと思う。「あなたの会社の売上はいくらなんですか? 数百億ですか? 数千億ですか? 業績を景気の責任にできるのはそのクラスですよ。自社の業績悪化の原因を、不況に転嫁する前に、あなたは社長としてやるべきことしているのですか? 確かに安い価格を望まれている顧客もいるかもしれないが、良い仕事をする運送会社を望まれている顧客も多くいるのでは? こんな時代だから、良い仕事がより評価されるのではないですか? 頑張りなさい。」と