京都東山に真々庵という庵がある。知人の特別な計らいで見学させていただいた。
「真々庵は昭和36年に松下幸之助さんが社長を退任して会長に就任したのを機に、一時中断していたPHPの研究活動を再開するために求めた別宅。昭和55年に松下電器の施設となり全面改築、名称も松下真々庵とし、当時と同じ状態に庭園・建物を整備保存し迎賓機能を果たしている。」「庭園は7代目小川治兵衛(庭治)の明治42年の作で、東山を借景」松下真々庵のパンフレットには転記されており、多くの著名時がここを訪れている。庭園を維持するため、一般公開はされていない。
約束30分前に車で現地を通りすぎると、既にスーツを着たお迎えの男性が2名が門で待たれている。水を張った石畳、取り囲む緑、見事な苔、そして玄関。玄関ホールには支配人と着物の女性の2名が迎えてくれる。芳名帳に記入を済ませ本館の広間に入ると、一面に見事な庭園が目の前に広がる。
本館で一通り説明を聞き、庭園に。庭園の小道、コンクリートと思ったら、白砂がきれいに敷き詰められている。苔と白砂の境目は5ミリ位の土が覗くが、その境目に見事に砂が盛られている。支配人に手入れを聞くと、我々の訪問に際し、手で白砂を均し、苔との境目は定規を当て盛っているそうだ。しゃがんで凝視しても砂1つも土にはみ出ていない。見事である。
それを切っ掛けに迎える準備を色々を質問する。年間通じて常勤15名の庭師らがこの庭園の維持にあたる。来客をお迎えするため落ち葉は全て拾われ、今落ちている落ち葉は30分以内に落ちたものだという。管理スタッフは我々の見えないところで、待機して黒子にて徹する。本館の絨毯も来客の見学コースと時間を計算して、3回は足跡を消す為の清掃が入るそうだ。確かにその瞬間は自分の足跡がついているが、地下に展示室を見た後一階に戻るとその足跡は消されていた。
日本の「おもてなしの心」の真髄を学ばせていただいた。我々の質問攻めで聞かせてもらうことができたが、本来語らないことだ。見えないところにどれだけ手間をかけることが出来るのか。お客様が清清しい気持ちで数時間を滞在してもらうために、年間を通じて最善を尽くしている。真々庵はベストシーズンで準備が整った時しか門は開かれないという。下世話な私はすぐお金に換算したが、一回の訪問は100万円~150万円を下らないコストはかかっている。
自宅に帰って家内に真々庵の話をしたら「そう言えば最近パナソニックの冷蔵庫を買ったから、あなたもお客様だわ」と言っていた。
(写真: 写真撮影は厳禁、パンフより)