事故を起こした運転手は、半年間ハンドルは握らない別の仕事につき、辛抱強く耐えてくれた。
法的な過失はゼロで免許もそのままだった。
でも実際に人が亡ったことは事実で、夜間だから、雨だから、逆走してきたから起きてしまった事故だとも割り切れず、弊社にも過失は有ると今でも思っている。それは私の過失でもある。
運転手は警察に2日間保護され、勿論取り調べも行われたが、精神が落ち着くまでの本人の為の留置期間である事も知らされた。
運転手の精神状態が落ち着くまで数十日かかったが、その後に、事故の状況を本人から詳しく聞いた。
・・・何かを跳ねたと思った。その場を逃げ出したい強烈な誘惑があった。車を停止し、何が起きたか確認した。そこで数百メートルに渡りバラバラになった遺体を見る事になった。
いま思い出すと、現場で多くの初めて会う運転手から温かい協力を受けた。
二重事故が起きないように通行車両を誘導してくれた人、警察に通報してくれた人、「逃げるなよ。絶対逃げるなよ。一生後悔するぞ、警察が来るまで付き添うからガンバレ。」といいながら励ましてくれた人。そんな仲間がいてくれたから、その場にふんばれたと泣きながら話してくれた。
・・・私はこの経験以来「事故は確率の問題だ」と言うことにしている。確率だから100%避けることはできないかもしれないが、確率を下げる努力は自分でできる。
そして今日も一日が無事終わってくれた事に感謝している。